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2006年06月11日

鈴の音 海の色 第17話〜傘〜

雨にぬれている人に傘を差し出せる、そんな人になりなさい。決して指を指して笑ってはいけないよ。自分が不利になってもいい。損をしてもいい。懐が寒くなっても心は温かい。そんな人間になりなさい、鈴。


死ぬ前に父親があたしに言った言葉がなぜだかふっとでてきた。
やさしかった。堅実だった。厳しかった。でもやっぱりやさしかった。
そういえば、お父さんが死んだ日も、こんな天気だったかもしれない。朝は晴れていたのに午後から雨が降って。
お父さんはなんとなく雨が降りそうだから、と傘を持っていって。なのにかえってきたお父さんの手には傘がなくてずぶ濡れで。
雨にぬれて、うつろな瞳で歩いている小さな女の子にあげた、と。そう言って笑った父の顔。それが父の見せた最後の笑顔。その夜に、突然発作をおこして倒れた。あのときほど、人を憎んだことはなかったかもしれない。
持病をもっていた。無理なんかするから、とお母さんは毎日泣いていた。お父さんが傘をあげた女の子がいなければ――――・・・。そう考える自分が嫌で、あたしは泣いた。お母さんと音葉と一緒に毎日泣いた。いつからか・・・3人とも泣かなくなった。

急に体をぬらす雫がなくなる。上を見れば、アイボリーの真新しい傘。
斜め後ろを見れば、海色の髪に水滴をつけている池沢が立っていた。
「鈴。傘忘れたの?」
「うん」
「風邪ひくよ?」
「うん」
「もうすぐテストだから休まないほうがいいよ?」
「うん」
「功一たちも心配するしさ」
「うん」
「・・・泣いてるの?」
「・・・うん」
お父さんも、こんな風にして傘を差し出したのかな。って思ったら。
女の子は、こんな気持ちで受け取ったのかな。って思ったら。
自然にあふれてきた涙。
それはとどまることを知らずに。
バケツをひっくり返したような雨の中で、小さく音も立てずにこぼれた。
黙って傘に入れたまま歩いてくれた池沢に、心のそこから感謝した。







「ここでいいよ・・・ありがと」
家の近くの年中閉まっている床屋の前で、あたしは池沢と別れた。
いらない、と言ったが、池沢はあたしに傘を渡して帰ってしまった。
家は近いから、と。明日返してくれればいい、と。それだけ言って、帰っていった。
雨はさっきより強くなっていたのに、どうしてだかあたしはスキップしたくなった。
「・・・泣いたらなーんかすっきりしたな・・・」
ずっと曇っていたのかもしれない。父が死んだあの日からずっと曇っていたのかもしれない。

雨があがったのは、夜遅くだった。
雲を切り裂いたような空とともに朝は始まった。あたしの心と、似ているような気がした。

その日、池沢は学校に来なかった。






いやん(何
やっぱ書いてる本人が暗いと物語も暗くなるのね。
おおざっぱに書いてるプロット見るとこの回は・・・大きな文字でギャグって書いてますね。
・・・・どこがギャグなんじゃいっ(本気
でもまぁいいかんじに鈴の中での池沢のポイントが上がったのでよしとしましょう(何
なんせ次回はむふふふふ・・・
最近出てなかった霞と功一もでてきます。私的にあいつら大好き。ウルトラスーパーミラクル馬鹿コンビ(長
功一は大活躍です。次回大活躍の予定です。
だってプロットに巨大文字で功一大活躍って書いてて色ペンでラインひいててまわりに金のペンで飾ってあるもん。大活躍しなかったらおかしいよ、これ。
そろそろラストスパートです。っつっても第1部の、です。これ、2部もあんのね(笑
長々と失礼しました。色々言い訳とかしなきゃなーと思ったのよ(何故

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ニックネーム ラピスラズリ at 20:02| Comment(19) | *Story***

2006年06月01日

鈴の音 海の色 第15話〜僕の友達〜

真っ黒で、烏の翼みたいに真っ黒な2枚の羽
真っ赤で、血みたいに真っ赤な2つの瞳
黒と白でできた、皮でできた服
鋭くとがった爪
鋭くとがった耳
鋭くとがった牙
「・・・呼んだ?」
形のいい唇がゆがむ。
「そんな不機嫌そうな顔しないでよ。獲物、あげるからさ」
獲物・・・とはバラバラに切り刻まれた男の死体か。あげる・・・ってどーゆー意味?
「・・・・・・あらぁ」
口元に手をあててにやりと笑った。かなり不気味。だけどとっても美人
それから細くて白い、綺麗な手を真っ赤に染めながら男の死体を肉片ひとつ残さずに拾い集め、 ごちそー様 とだけ言い残して女の人は消えた。
いや、人じゃないな・・・あれ。
だってこれと同類・・・・
あたしは横目で池沢を見た。
「・・・あれ何?」
あたしの声に池沢はにやっと笑った。返り血をあびたままだから怖い。
「僕の友達」
あたしの口からは反論の声も出ない。
頭の上に池沢が乗っているのに気づかなかったヨサ。
いきなり鋭く伸びた爪。
人間を引き裂くほどの力。
血で染まっても平気だったから、初めてじゃないんだろう。
友達、と示した悪魔っぽい女の人。
そこまで見ればもーなんか池沢があっちの奴っていうのに納得してしまう。
そんな自分が嫌だ。
「・・・聞くまでもないね」
口元についた返り血をぬぐいながら池沢は歩き出した。
「僕がいなかったら鈴どーなってたかなー?」
う・・・とつまった。
そりゃ原因は池沢だとしても助けてくれたのも池沢で、池沢がいなかったら今頃どこに連れていかれていたか。
・・・・・・・・想像しただけで吐き気がする。
「まぁ・・・その点については感謝するけどー・・・」
「じゃー1こだけお願いきーて?」
振り返りながら子どもっぽく池沢は笑った。
彼が輝いて見えるのはバックにある夕日のせいだ。
「・・・・・彼女になれとか以外ならいーよ」
「・・・」
図星らしい。今度は池沢がつまった。
あーやっぱこいつ最悪。
「じゃー友達っ!妥協して友達っ!100歩譲って友達っ!!」
涙目で、上目で見てきた。
妥協して友達・・・ですか。
「あたしとしてはあんたはもう友達だと思ってたけど」
嘘だけど。
「え!?そーなの!?」
アッサリ奴は信じやがった。いくらあっちの奴でいくら強くてもこいつ、アホだ。
「じゃーもーちょっとさー、優しくしてよーぅ」
「あたしはいつでも優しいわよっ!」
嘘だけど。
それでも少しは優しくしてやろうと
少しは親しくしてやろうと
池沢の海色の髪を見ながらそう思った。





次回は何故が半年後。
何故・・・?
ニックネーム ラピスラズリ at 18:02| Comment(11) | *Story***

2006年05月27日

鈴の音 海の色 第14話〜証明してあげる〜

伸びた爪。にやっと笑う口。隙間から見える・・・あれは牙?
鮮血。流血。返り血。
悲鳴。罵声。人が崩れる音。不協和音であたしの耳に届く。
池沢は笑っていた。悪者っぽい顔で笑っていた。それはまるで人が死ぬのを喜ぶように。血でぬれることを快楽と感じているように。
転がった肉片。散らばった白い肉片には大量の赤い液体。道路を染めているのは、さっきまであたしを掴んでいた奴の体内から流出された血。
・・・ホラー映画でも見ている気分だ。
池沢がゴギンと指を鳴らしてヨサたちの方を見た。
鋭い眼光。近寄ったら瞬時に切り落とされそうなくらい。
「す・・・・すまなかった・・・い、命だけはっ・・・」
ヨサが、震えながら言う。さっきまで殺ろうとしていたのに、今は命乞い。
あたしなら許さない。容赦はしない。それは池沢も同じだった。
力強く地面を蹴って宙を舞う。悲鳴をあげるヨサたち。
額に突き刺さった池沢の長い爪。時間が止まったように、一瞬音も、色も、全部消えた。

ぱきん


音と同時にヨサたちは崩れ落ちた。いっきに9人。全員崩れた。
あれ・・・?でも血が出ない。確かに突き刺した。首の後ろから肉を突き通した爪が見えた。なのに血が出ていない。ヨサたちはどうやら気絶しているらしい。
池沢がいきなり振り向いた。あたしは思わず後ずさりをする。
・・・そりゃあんな光景見せられたら後ずさりもしたくなるさ。それに今全身返り血で染まってて怖いし。
そんな池沢の口から思いがけない声が出た。
「鈴、こっちきて」
「え、えぇええぇ!?何故!?」
怖い怖い怖い怖いこわいコワイKOWAI!!返り血拭おうともしないで何言ってんのよ!
でもなんか絶対来いってかんじだったし爪も短くなってたし表情もだいぶ優しくなってたからあたしは恐る恐る足を進めた。
「な、何?」
池沢の前に来てあたしは恐る恐る話しかけた。
「そんな怖がんなくても・・・」
・・・怖がりますよ。だって血まみれですよ!?それも自分の血じゃなくて返り血ですよ!?怖いよ。怖いにきまってるじゃないですか。なんていうか貞子がテレビから出てくるぐらい怖いよ。
「まーいーや。鈴、証明してあげよっか」
「は?」
・・・何を?何を証明するんですか。もーいやだ・・・なんであたしがこんな目に。この間まであたし普通の高校生活送ってなかったっけ?そりゃよく周りの人は死んだし魔女って呼ばれてたけどさ。普通だよ。今思えば・・・・・。
「僕が、あっちの世界の奴ってこと。証明してあげるよ」
返り血浴びたままで、池沢はにっこり笑った。
笑ったまま、2回指を鳴らした。
ニックネーム ラピスラズリ at 22:08| Comment(5) | *Story***

2006年05月24日

鈴の音 海の色 第13話〜カルシウム不足〜

「おいこらねーちゃん、ヨサ様にぶつかるなんざえぇ度胸してんなぁ」
予想的中。ヤのつく職業の方っぽい。
え、ていうかあたしもしかしてピンチ!?
だってここは人通りの少ない路地。助けなんて呼べるわけもなく。
「おいお前がぶつかったせいで骨が折れたわ。治療費払うよなぁ?」
あれ?なんか・・・
なんか・・・・なんか・・・・・・・・・・・ぷつ。
頭の隅っこで何かが切れる音がした。
あたしは思いっきりヤクザのおっさんたちの後ろを指差した。
「なんだてめぇ」
襟首を掴んでくるおっさんを無視してあたしは皮肉をこめて言った。
「そこのスーパーで牛乳1本100円で売ってるから買って飲んだら?女子高生がぶつかったぐらいで骨が折れるなんてカルシウム不足よ。そうだ、怒りっぽいのもカルシウム不足なのね。皆して買いに行ったらどーよ」
言ってからしまったって思うけどあたしの口は止まらない。あぁ、あたしもきっとカルシウム不足。
「何だと?てめぇヨサ様にはむかうつもりか」
「よせ佐々木」
あたしに殴りかかろうとした佐々木(というらしい)をヨサ(というらしい)がとめる。
「なぁねぇちゃんよ。俺の持つ店で働かねぇか?ねぇちゃんなら売れるぞぉ?」
・・・・・・・・蹴り殺したい。
「たしかに俺はカルシウム不足かもしれんが・・・ねぇちゃんもカルシウム不足だな」
サングラスに髭面のヨサはあたしの顔を覗き込んでにやっと笑った。
激しいおっさん臭にあたしは思わず目をつぶる。
「・・・・・ウゼェ・・・・・」
あたしがボソっとつぶやいた言葉に眉毛をピクっと動かす。
あぁ、あたしってなんて馬鹿・・・・・・・・・。
ヨサがあたしの襟首をつかむ。あぁああぁぁあ。顔が近い。
「よぉねえちゃん。そりゃないよなぁ?もうこうなったらねえちゃんは俺の店で働いてもらおうかね」
・・・・イヤです・・・。
佐々木とか他のやつとかがあたしを囲む。どうやらかついで運ぶつもりらしい。
ヨサがにやりと笑った。


パキン



頭上で何かが割れるような音がした。
フと顔をあげたあたしと、池沢の目があう。
ヨサの頭に腰掛けて笑っている池沢。ヨサは池沢に気づいていない。
「て、てめぇ!ヨサ様の頭に乗るなんて自殺志願者か!?」
仲間のセリフで え? というふうにヨサが上を見る。その瞬間池沢はにやっと笑ってヨサの顔をかかとで蹴っ飛ばした。
「よ、ヨサ様!!!?」
仲間あたふた。あたしは呆然。ヨサを蹴っ飛ばした池沢は笑みを浮かべながらあたしを掴んでいるやつをスピードに乗せて蹴り飛ばす。
仲間たちはそのへんに落ちていたバッドとか懐から取り出したスタンガンとかナイフとかを構えて池沢を迎え撃つ。それを全部すれすれでかわす。
かわす。
かわして。
ずぢゃ・・・・・
佐々木とよばれた男を。笑みを浮かべたままの池沢が。
さっきまであたしより短かったのに。今は長くて鋭い。そして赤い液体がついている。
ナイフのように鋭くとがった長い爪で。
池沢は佐々木を斬りおとした。

どうして爪が伸びているの?どうしてヨサはあんたに気がつかなかったの?
どうして赤い液体で汚れているの?どうしてその中で笑っているの?

響き渡るほかの仲間たちの叫び。悲鳴。
あたしの目の前に真っ赤な血を帯びた白い肉片が転がってきた。
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ニックネーム ラピスラズリ at 18:28| Comment(4) | *Story***

2006年05月22日

鈴の音 海の色 第12話〜嫌い+告白=?

「・・・何言ってんの?」
当たり前な返事をした。うん、ごめん。あたしほら芸人じゃないし。
「えぇ〜・・・鈴冷たいよぅ・・・」
とか言いつつ顔は笑ったまま。
なんなのよ、こいつ。
「関わりたくないって言ったじゃん。付き合ったら今以上に関わることになるでしょーがっ!」
「だってさぁ…好きになっちゃったもんはしょーがないでしょ?」
「な・・・」
頬がどんどん熱を帯びる。耳の先っぽまで熱い。
そういえばあたし、生まれて初めて告白というものをされたのかもしれない。
誰かに好きって言ってもらったのは初めてだ。
・・・霞とかはしょっちゅう言ってるけど。
そいで一瞬でも好きだった人で?
今も笑ってる顔がかっこいいなぁとは思ったりしてて?
あたしは・・・どう思ってるんだろう・・・。
やっぱ・・・好きなのかなぁ・・・?
「ていうか僕の正体バラしちゃったからー…そーゆー関係になってもらわないといろいろ困るし」

前言撤回!!!!

やっぱ意味わかんないやこいつ。
一瞬でも好きなのか!?って思った数秒前の自分が憎い!腹立つ!!
嫌悪がふくらんできたあたしはこの場でとどまっているとそのうち取り返しのつかないことになりそうだったから池沢はほうっておいて家に向かって歩き出した。
「あ、鈴!待ってよ」
誰が待つかボケっ!
あぁ・・・あたしこんな荒れた人間じゃなかったはずなのに・・・。
それもこれも全部、そう。こいつが・・・・!!!!
そう思うと嫌悪は増すし怒りメーターは急上昇するし。
家へ向かう足は速くなる一方で。
ろくに前も見ないで。
何かにぶつかった衝撃でわれに返る。
目の前に立っているいかにもヤのつく職業っぽい方たち。
あたしの顔にいっきに青線がはいった。






鈴ちゃんピーンチ!!
っていうところでとめてみた(笑
ニックネーム ラピスラズリ at 18:01| Comment(8) | *Story***

2006年05月21日

鈴の音 海の色 第11話〜ついてこないでよ〜

「ねぇ鈴、一緒帰ろう?」
・・・・どの面下げてんなこと言ってんじゃボケ。

校門の前で池沢はあたしに声をかけてきた。
もちろんシカト。
そのまま池沢の前を足早に通って家に向かう。


あー・・・綺麗な夕日。
心地よい風。
澄み切った空を、夕日が紅く染め、風が雲を流す。
街も微かにオレンジ色に染まっていて、とても綺麗な光景だ。
すがすがしい空気が当たり一面に漂う。
古ぼけたこの商店街も優しい匂いが漂っている。
懐かしいような、包み込まれるような。
そんなかんじがする。


・・・・こいつさえいなければっ!

「ねー鈴、なんでシカトすんのさぁ」
「・・・何で・・?」
キっと睨んで勢いよく息を吸う。
「っあんたが昨日あんなこと言うからでしょ!?魔物だとかあっちの世界だとかあっちの連中だとか!このバカっ」
「うん。そーだね」
あたしが怒ってるのに気づいてるのかこいつ・・・
天然なのかやり手なのか掴めない・・・
あー余計ムカツク。
「でもさ、本当のことなんだから仕方ないじゃん?」
ニコニコしながらあいかわらずの調子で言う。
・・・・・すっげー腹立つこいつ・・・
「わかった。ハッキリ言う」
1回ため息をついてから、あたしはゆっくり、小さい子に言い聞かせるようなかんじで言った。
「あたしは意味わかんない人嫌いなの。わかる?意味わかんないこと言う人も嫌いなの。だからー・・・もうあたしに関わんないでくんない?」
そう言ったら、少しだけ考える素振りを見せて、それからやっぱりニコニコ笑いながら信じがたい台詞を吐きやがった。
「んー・・・あ、じゃあさ。僕と付き合って??」




      ・・・・・・何を・・・・・言い出すんだこいつは・・・
ニックネーム ラピスラズリ at 16:30| Comment(0) | *Story***

2006年05月20日

鈴の音 海の色 第10話〜日常?〜

「鈴〜♪おっはよん♪♪」
いきなり背中にかかった体重をささえきれずに、あたしは前のめりになった。
「あり?今日も元気ない??」
「寝不足なだけだよ。いいから早くどいて?」
「ん。ごめん」
軽くなった背中を伸ばして、あたしは霞と学校に向かった。


結局昨日は一睡もできなかった。
それもこれも全部あのアホ野郎のせい。
なにが「僕もねー、あっちの人。人型ってめずらしーんだよ」だ。
ふざけた冗談言うなっつーの。


でも・・・・あいつの言うこと否定しちゃったらあのスライムみたいなやつを見たことも否定することになるし・・・・・
あーもー
なんであたしがこんなこと考えなきゃいけないのよっっ!!


「わーい♪皆おはよ〜!一昨日ぶりぃ〜!!」
教室に入るなり霞は叫んだ。
「おー、霞。一昨日ぶりー。今日も魔女と一緒なんだ?」
「だから魔女じゃないってば」
いつも通りの会話。
どこにも変なところはない。
「あれ・・・魔女・・・ご機嫌斜め・・・・??」
それでも功一はあたしの微妙な心境変化に気づく。
こーゆーところは無駄に敏感。
いろんな意味で尊敬する。
「別に・・・寝不足なだけだよ・・・・」
「そ?ならいいけど・・・」
「あ、鈴。おはよ」
出たよ。
あたしの寝不足の原因。
普通に声かけてんじゃねぇよぅ。
「・・・・・・・・・・。」
「鈴ちゃん??どったの?顔怖いよぅ」
「鈴、機嫌悪いからって佐祐にあたっちゃだめだってば」
霞と功一は何も知らないからいいよねー。
あんなん聞いて普通に接する方が怖いってば。
「昨日はごめんね?たいしたことじゃないからさ、忘れて?」
「何?昨日池沢と鈴なんかあったの?」
美羽が会話に入ってくる。
「べっつに〜。何もないよ?それよりオバジュニ来てるから座ろ?」
「そーだな」
よっしゃ!何とか誤魔化せた。


右に座る池沢を横目で見る。
なーにがたいしたことじゃないだ。
たいしたことだっつーの。
忘れて?
無理な話。
だったら最初から言うなってーの。

「何?」
あたしの視線に気づいたのか、池沢が先生にバレないように話しかけてきた。
「・・・あんたさぁ・・・」
「何?」
「・・・・やっぱいいや・・・」
「は?」
本当にあっちの奴なの?
とか聞いたら認めてるみたいだし。
別にあたしには関係ないし。





このときあたしはまだ何も知らなかった。


もう歯車は動き出していた。
ニックネーム ラピスラズリ at 09:49| Comment(9) | *Story***

2006年05月18日

鈴の音 海の色 第9話〜馬鹿でしょ!!〜

「・・・・馬っ鹿じゃないの?」
「ん?」
「あたし忙しいんだからさぁ、そーゆー冗談やめてくんないかなー」
カバンを左手に持ち替えてにらむ。
「んなこと言われたって・・・」
池沢は困ったように頭をかく。
「本当のことなんだから仕方ないじゃん」
最後の言葉が言い終わらないうちにふっとぶ池沢。
あたしの回し蹴りが見事に命中していた。
「もーつきあってらんない!帰るっ!」
投げつけるように叫んで、あたしは背を向けて家にむかった。


「冗談・・・・ね」
蹴飛ばされたまましりもちをついていた彼は起き上がることもなく早足で帰っていく彼女を見つめる。
「ま、最初はこんぐらいのほうが・・・」
そこで1回言葉を切って、舌で上唇を軽くなめてからつぶやいた。
「燃えるってもんだよね」
立ち上がりながら彼は笑った。
空はもう、紅く染まっていた。


あれから何時間たったのかな・・・
時計の音だけが妙に響く。
時折、近所にいる犬の遠吠えが聞こえる。
池沢の言うこともわからなくもなかった。
たしかにあの時変な化け物だって見た。
自分のまわりでは人はたくさん死んだ。
それゆえ死神と蔑まれいじめられたこともあった。
いじめ返したけど。
「でも普通さー・・・」
声に出してつぶやく。
あんなこと言う?
転入してきてすぐに。
あーあたしあんなのにときめいてたんだー・・・。
・・・・最悪。
過去に戻れるもんならもどりたいっっ!!
大体あっちってどこよ!
人型ってどーゆことよ!


結局彼女は一睡もしないまま朝を迎えたのだった。
ニックネーム ラピスラズリ at 18:36| Comment(8) | *Story***

2006年05月16日

鈴の音 海の色 第8話〜つきつけられた真実〜

「魂の形って・・・どういう意味?」
お笑い芸人とかだったらこういうときにはふざけたつっこみいれるんだろうけどあたしはあいにく普通の人間。
普通のつっこみしかできなかった。
「うん。そーだね。いきなし言われてもわかるわけないね」
「いやだから早く説明しようよ・・・」
「人間の魂の形は人それぞれでー、普通は球なんだけどー、鈴のは2重層になっててー、そんでもってその形ってのが球の中にとげとげしたのが入ってるやつなんだけどー、めずらしーんだよねー。2重層なのもだけどとげとげしたやつ。わかった?」
・・・・・ますますわからない。
そもそも魂の形って見えるもんなわけ!?
「・・・なんかまだわかってないみたいだけど・・・」
表情にでてたのか声がでてたのか。
池沢はあたしの考えてることにたいして答えた。
「だよねー。いきなり魂がどーたらこーたら言われてもわかるわけないよねー」
「あたりまえでしょ。で!」
で のところで池沢を下からにらむ。
あーくそ。
こいつでけーなーオイ。
「だからなんなわけ?あたしの魂の形がよくってあんたがそれを気に入ったとしてもあたしにはあんまし関係なくない?」
「うん。そーだね」
むっかつくなぁこいつ。
うざい。
本っっ当うざい。
蹴っ飛ばして帰ろっかな・・・
そう思った瞬間。
背後から響く女性の悲鳴と何かが落ちる落下音。
そしてー・・・
     ぐしゃっ
何かがつぶれる音。
振り返って思わず口を押さえる。
「鈴、上見て」
「ちょ、あんたこんな状態見てよく平然としてられるわね」
吐き気がする。
鉄骨の下敷きになったサラリーマンらしき男性。
あのへにょへにょして血にまみれてる物体は何!?
            夢にでそー・・・
「いいから。あの鉄骨が落ちてきたとこ。あのビルの屋上」
「なんでんなとこ・・・・・・・・・なにあれ」
言われたとおりに上を見て目に入った物。
それは・・・・言葉であらわしにくいな・・・
黒いスライムの巨大ヴァージョンみたいなやつ。
金色に光る目はその中心に1つしかない。
「あれはね、あっちから来たやつ」
あっち・・・?
何処?
「鈴のまわりでさぁ、人が死ぬことって多くない?事故死とか・・・」
何を言い出すと思えばそんなこと。
んなことあるわけないじゃん
とか言いたいところ。
でも否定できない。
3歳のとき隣のおばさんが誤って芝刈り機に足挟んで出血多量で死んだり。
5歳んときに幼稚園の先生が謎の奇病で倒れてそのまま死んだり。
6歳のとき遊びに行った海で波にのまれて男の子が死んだり。
10歳のときにはブレーキのきかなくなった大型トラックに幼馴染がはねられて即死だったし・・・
最近ではいとこがいきなり鼻血ふいたと思ったらとまらなくて結局出血多量で逝っちゃうし。
たしかに死にすぎ。
「まー・・・多い方だよねー・・・うん」
「それねー、鈴狙いできたけど拒まれちゃって仕方ないからそこらへんの魂狩ってもってこーとするあっちのやつらのせいだね」
は?
またあっちのやつら?
っていうかあっちってどこさ。
あんたもあっちの奴?
あっちの意味がわかんないけど。
「僕もねー、あっちの人。人型ってめずらしーんだよ」
さも当たり前かのようにあっちの人と言い。
さも当たり前かのように人型と言い。
極上の笑顔でそー言われても信じる方が

            馬鹿だ
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ニックネーム ラピスラズリ at 17:44| Comment(2) | *Story***

2006年05月15日

鈴の音 海の色 第7話〜壊れたモノ〜

「きりーつぅ。れぇーい。」
功一の間の抜けた声が教室を駆け抜ける。
それを合図にさよーならーとクラスで目立つ人間が叫ぶ。
「鈴、もう帰んの?」
「ん。今日はご飯つくんなきゃいけないし」
「そか。大変だね。あ〜・・・今日委員会じゃんかぁ・・・」
美羽がだるそうに嘆く。
まぁ・・・無理もないんだろうけど。
「じゃ、また明日ね」
「ん。じゃね」
なんか無駄に重たいカバンを片手に教室から出る。
あー・・・重っ・・・・・・・・・・・・だっりー・・・・
靴箱で靴を履き替えるのも一苦労。
教室を出て校門にたどりつくまで5分弱。
4階って遠いんだよなぁ・・・


それは校門を抜けて少し歩いたときだった。

「鈴」
低い、よく通る声が耳に響く。
「池沢・・・」
振り向いて向けた視線の先には海色の髪とそれより少し薄い瞳の人。
「鈴の家ってこっちなんだ」
「うん。遠いけどね」
体が熱くなるかんじがする。
今熱測ったら絶対平熱より1度高いと思う・・・
「僕の家もこっちなんだ。ね、鈴。一緒帰んない?」
「いいけど・・・」

2人は並んで歩く。
人通りの多い駅付近から寂れた商店街に入っていく。
「ねー鈴ってさぁ」
「なに?」
「いい形してるよね」
「は?」
形!?
なんの!?
いつの間にかまわりには人がいなくなっていた。
そしてこの場所は・・・
池沢そっくりの男に会ったところだった。
池沢の足がふいに止まる。
青い瞳があたしの目線をとらえる。
「ずっと探してたんだよねぇ・・・」
・・・意味がわかんない。
やっぱあたしこいつのこと好きじゃない。
きっとあれはなにかの間違い。
うん。
こんな意味わかんない奴好きじゃない。うん。
絶句してるあたしを気にもとめずに、池沢は話を続ける。
「17年前から目ーつけてたけどさー。やっと見つけたよ」
「だから何をよ!!」
怒鳴る。
思わず怒鳴る。
あたし馬鹿は別に平気だけど意味わかんない奴ってやだ。
何がやだって言われたらわかんないけど。
なんかやだ。
生理的に受け付けたくない。
「その魂の形」
「は?」
「その魂の形が気に入ったの」



・・・・・・・意味わかんない・・・・・・・続きを読む
ニックネーム ラピスラズリ at 17:05| Comment(0) | *Story***

2006年05月14日

鈴の音 海の色 第6話〜恋だねそれは〜

「恋だねそれは」
「ぅ・・・・やっぱ?」
「うん。っていうか授業中に話しかけんな!しかも黒澤の時に!」
「ん。ごめん」
黒澤は数学の担当の筋肉野郎。ぶっちゃけうざい。
「今日は18日だからぁ・・・・え〜・・・・峰咲。」
げ・・・・・・・・・・・・最悪・・・・
あたしこれ苦手・・・・・・。っていうか意味わかんないんだけど。
「問3を黒板に書きやがれ・・・・・じゃなくて書きなさい」
「おーい、元ヤンしっかりぃ」
「うるせぇ!無駄口たたくな!」
功一って黒澤と仲いいんだよねぇ。親戚らしいけど。
「おい峰咲。たったか前きて答え書く!!」
「あーはいはい」
ったくめんどくさい・・・・・
問3ってどんなだっけ?
・・・・・・・・あ、なんだ。これ昨日予習したやつじゃん。やった。
黒板に近寄ってチョークを握る。
「え〜っと・・・・・・・・・・・だから・・・・・・・で・・・・・・」
「峰咲ボーっとしてるわりにはちゃんとわかってんじゃねぇかよ。吉岡とちがって」
「おい。聞こえてるぞぉ黒澤ぁ。」
「当たり前だ。聞こえるように言ったんだから。お前も峰咲見習ってちゃんと勉強しろ」
あー・・・・うるさい。集中できないじゃん。黙れ筋肉野郎。
「先生・・・・・」
あいかわらず功一と喧嘩(?)している黒澤の襟元を引っ張ってにらむ。
「あ?あぁ。できたか。よし、座っていいぞ。それから吉岡ぁ。あとで職員室こい」
「やだねぇ」
「絶対来いよ!・・・・・・っとじゃあお前ら。峰咲が書いたやつ模範と一緒だから書き写せよ。期末に出るからなぁ。」
鐘が鳴って授業が終わる。黒澤は功一にしつこく付きまとっていた。功一は蹴飛ばしてたけど。
「鈴。あんた今日購買?」
後ろを振り返りながら美羽が言う。
「うん。今日購買だよ」
「まじ?俺も。母さん今日寝坊しやがってさぁ」
「私もなんだよね。時間なくって・・・・・」
あたしの周りに功一と春香が寄ってくる。
「なぁ佐祐ぇ。お前も購買だろ?一緒行こうぜ」
「あぁうん。」
「ちょっと!この俺様を置いてく気?」
「潤平。あんたも購買?」
「俺はいつでも購買だよ。っと・・・・池沢もいくの?」
「なんだよ。お前佐祐苦手なわけ?」
「や、そういうわけじゃねぇけどよ。そういやお前と仲いいんだったな。
有川潤平。よろしく」
「有川くん・・・・よろしく」
「ちょっとさぁ。早く行こうよ。歩きながらでもしゃべれるじゃん」
「ごめんよ委員長ぅ」
美羽のいらつき声に皆謝る。
・・・・だって怖いんだもんよ。

6人で歩きながら気づいた。
先頭を歩いてるのは潤平と美羽。
その後ろを歩いてるのは功一と春香。
幼馴染の功一と春香は気がつけばしょっちゅう喧嘩してる。
潤平と美羽はいとこなんだってさ。似てないけど。
で・・・・・・
あたしの隣にいるのは・・・・・
「峰咲さんって頭いいんだね。僕さっきの問題解けなかったもん」
低い声と青い髪と瞳。
身長はあたしより頭1個分ぐらい高い人。
まぁあたし156cmなんだけどね。
ちっちゃいって言わないでよ?
「そういえば峰咲さんって・・・」
「呼び捨てでいいよ?それか・・・・・魔女で・・・・・・」
だってなんかさん付けって慣れない・・・・。魔女もちょっとやだけど。
しばらく考えて池沢はまた口を開いた。
「じゃあ・・・・・鈴って部活入ってないの?」
「え・・・・帰宅だけど・・・・」
何!?
今鈴っつった!?
そりゃ呼び捨てにしていいって言ったけど・・・・
まさか下の名前でくるとは思わなかったし!!

・・・・・なんか・・・・・変な感じだ。
心がふわふわしてて、地面に足がついていないみたいだ。
一昨日までは
こんな自分いなかったのに・・・・・。
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2006年05月12日

鈴の音 海の色 第5話〜意外な特技〜

「魔女おっはよぉ♪今日は霞と一緒じゃないんだね」
「魔女って言うなって言ってるでしょぉ!?霞は今日休みだって。メール来た」
「峰咲さん。おはよう」
・・・・・・・。せっかく忘れてたのに。
クラスが一緒だから・・・・・。
くそっ。校長の馬鹿。ハゲっ!!
「おーい。鈴。シカトかコラ。せっかく佐祐が声かけたのに」
「え、あ。ごめん。ボーっとしてた。おはよう、池沢君」
とってつけたような返事。
だってあたしあいつ苦手。
功一が教えてくれなかったらそんままスルーしてたのに。
って・・・・・
「功一」
「なに?」
「今なんて言った?」
「今?えっと・・・なに?」
・・・・・そこじゃなくて!!
「もう一個前」
「お前さ。俺がウルトラスパーミラクル馬鹿っていうこと忘れてる?」
そうだった。
こいつが自分の言ったこと覚えてるわけがない。
「おーい。鈴。シカトかコラ。せっかく佐祐が声かけたのに」
「「・・・・・・・。」」
低く通る声が響く。
「そう。それ」
「佐祐よく覚えてたなぁ」
「人の会話とか覚えるの得意だから」
「で、魔女。それがどーしたのさ」
「え。あぁ、うん。あんたが魔女じゃなくて鈴って呼んだから」
「なに?惚れた??」
少しだけ高い声が響く。
「いや。ちがう。珍しいなぁと・・・・・って美羽!いつからいたのさ。っていうか背後からいきなり声かけんのやめてよ。怖いじゃん!」
漆黒の髪を背中に垂らして、緑のふちのメガネをかけている美羽。
その中から鋭く光る琥珀色の目は、あたしと功一と池沢を映している。
「もう廊下に先生いるよ。今日はなんか機嫌悪いから席ついてたほうがいい」
「機嫌悪い?」
功一とあたしは納得したけど、池沢は納得していなかった。
そうだよね。
そりゃ転入生だもん。
知らないよね。
なーんも。
「大方夫と喧嘩したんじゃね?それか生徒におばさん呼ばわりされたか」
「まぁ・・・・・席に着いたほうがいいね」
あたしと美羽は功一の席から離れて自分の席に座った。
その後ろを池沢がついてきてあたしの横に座る。
やっぱりいつ見ても綺麗。
整った顔も
海色の髪も。
一瞬目があって、池沢は微笑む。
その青い瞳に映っているのは
困惑した表情のあたし。
頬が紅潮していく気がする。
そのことに気づかれちゃいそうで。
不自然に目線を前に向けた。

なんだか体全体が熱い気がする。
右に感じる彼の存在。
自然と笑みが浮かぶ。
なんだかあたしがあたしじゃないみたい。

こういう気持ちを
人はなんて呼ぶんだっけ・・・・・。


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ニックネーム ラピスラズリ at 17:39| Comment(2) | *Story***

2006年05月09日

鈴の音 海の色 第4話〜日常生活の1部分〜

朝。
それはいつものように始まった朝。
目覚まし時計が鳴り響いて、眠たい目をこすって。
そうやって目覚めた朝。
自分の体に鞭を打って、無理矢理起こした。
ベッドから降りるときによろめいて座り込む。
超低血圧人間としては日常茶飯事。
「あーもぉ。なんでうちの親はあたしを低血圧にしたかなぁ」
そんなの親のせいじゃないってわかっててもぼやきたくなる。
壁に掛かっている制服を着て、髪にブラシを通す。
私は超ストレートだ。
いつも先生に
「ストパーかけてんじゃないか?」
って言われるくらいストレート。
だからこそ癖っ毛に憧れるときもある。
肩で小さくはねる髪質によく憧れていた。
まぁ・・・・
今はこの髪質も気に入ってるんだけど。

軽くブラシを通して部屋から出る。
うちは2階建てだ。
2階に家族の部屋がそろっている。
といってもあたしと妹と母だけだが。
父親はもう10年以上前に他界した。
父は小さかったけれど会社を経営していた。
父はまじめだったので、貯金がたくさんあった。会社も売ったらお金になった。
今はそのお金で生活している。
もちろん母も働いているのだが。
あたしも夏休みなどの長期休暇ではバイトをしている。

「鈴、今日お母さん夜勤だから・・・ご飯、よろしくね。音葉の面倒も見ててね。」
「うん。わかった。」
母はここ数年でだいぶ老けた。
47歳にしては老けている。
仕事と家事の両立がつらいのか。
夫のいなくなった生活に疲れているのか。
よくわからない。
昔から母の考えていることはよくわからない。

「お姉ちゃん、今日あたしが洗濯物たたむからね。」
「うん。お願いね。」
あたしは家であまりしゃべらない。
親とか姉妹とか面倒くさいから。

朝ごはんを食べて。
時刻は7時23分。
もうそろそろ学校に行く時間だ。
「もうあたし学校行くね。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
母親のありきたりな言葉を背中に受けて、あたしは玄関のドアを開けた。

外へ出てから思い出す。
昨日の転入生の存在。
池沢佐祐とかいう存在。
一昨日の変だけどかっこよかった人の存在。
いっきに思い出す。
そして
あの嫌な感じ。
「・・・・・・。よし。忘れよう」
大体あの変だけどかっこいい、池沢に似た人に会ったからこんな考え事ばっかすんのよ。
あーあいつのせいだ。
よし。
今日は委員長いじめよ。
・・・・・美羽じゃないほうの・・・・。
もう1人の委員長。
森下慶一(もりしたけいいち)。
眼鏡で
いかにもまじめ優等生ってかんじの。
うじうじしたやつ。
いじめがいがあるんだよね。
ま、いじめるっつってもからかう程度だけど。
あいつあれで美羽に惚れてるからねぇ。
あー楽しみだ。

あたしは本当に池沢のことを忘れていた。
教室にはいって功一と一緒に声をかけられるまでは。
ニックネーム ラピスラズリ at 17:18| Comment(0) | *Story***

2006年05月06日

鈴の音 海の色 第2話〜謎〜

そんなあたしの気も知らず、先生は彼をどこに座らせようか迷っている。
「じゃあ・・・・池沢の席は」
「先生。」
先生の言葉を彼が切る。
「ん?なんざま」
    !?
今・・・・一瞬彼の瞳が光ったような・・・・
「す・・・・・・か・・・・・池・・・沢」
先生が一瞬フラつく。それにあわせるように言葉もフラつく。
「僕後ろのほうがいいな。」
「そうザマスね。じゃあ峰咲の隣で・・・あの子ザマス。それでよろしいザマスか??」
「はい。」
もう1度彼の瞳を見たが、最初見たときと何も変化はなかった。
先生もいつものようにザマスを連呼している。
「・・・見間違い?それとも気のせい??」
「鈴。どうしたの?今日1人ごと多いよ???」
美羽が再び振り向く。
「え、嘘。声出てた??」
「余裕で。モロ聞こえてた。」
「あ・・・あははははぁ・・・ゴメン」
「ん。別にいいんだけどさ。」
そうこうしているうちに彼は隣の席に座っていた。
「峰咲さん?よろしくね。」
「・・・・よろしく・・・・」
思わず無愛想なかんじになる。
だってなんか怪しいじゃん。昨日のことといいさっきのことといい・・・。
用心しとくに越したことはない。
とにかく
あまりかかわらないようにしとこ。
あの馬鹿軍団といればいくら変な奴でも寄ってこないでしょ。

           そんなこんなで
私の1日はいつもどおり終わった。
昨日みたいに変な人に会うこともなかったし
池沢は功一としゃべってるだけだったし。
放課後も本屋に寄って霞と喫茶店でコーヒー飲んだぐらいだし。
家でもパソコンチャットしたぐらいだし。
何一つ変わらない私の生活。
それでも
それでも何かが違った。
そんな気がした。
何かが起こりそうな
嫌な感じ。
やな夢見て目覚めの悪い朝を迎えたときのような
そんなかんじ。

そしてその嫌な感じは
見事に的中することになる。
ニックネーム ラピスラズリ at 14:27| Comment(0) | *Story***

2006年05月05日

鈴の音 海の色〜第1話 同一?〜

あ〜・・・だるい。
寝不足だ・・・。
あの変だけどかっこいい男のせいで眠れなかったし!!
学校を休みたいという欲望を押し込めて、フラフラしながら家を出る。
「鈴(すず)ちゃんおっはよ☆」
「うっわ・・・」
フラついてたところを思いっきり押されてあたしはコケそうになる。
なんとかそれをこらえてコケそうになった原因を見た。
「霞(かすみ)・・・おはよ。朝から元気だね・・・」
「鈴ちゃんが元気じゃないだけだよぉ。なに?寝不足??」
「うん、まぁそんなとこ・・・」
それからあたしたちは並んで教室に向かった。

      がらがらがらっ

「鳥海(とりうみ)高校2年3組女子番号4番木苺(きいちご)霞、ただいま教室到着っ!!皆おはよぉぉっ☆」
教室のドアを開けた瞬間霞は校長のヅラもふっとぶぐらい大きい声で叫んだ。
「霞・・・うるさい。」
しょっぱなからだめだししたのは成績つねに学年首席。趣味は読書(主に論文系)でいつも右手に本をもっているうちのクラスの学級委員長、遠野美羽(とおのみう)。
「おっはよ☆霞。今日も魔女と登校かい??」
「誰が魔女かっっ!!」
「だって鈴ってば魔法陣かけるし呪文とかなんかいっぱい知ってるし。魔女じゃなけりゃ魔神ってとこだよ。」
朝からこんな無礼なことを言うのは美羽とは真逆につねに最下位、最高点数は14点とかいう通称(?)ウルトラスーパーミラクル馬鹿、吉岡功一(よしおかこういち)。
魔女っていうのは一部の人(たいてい2−3の連中)があたしにつけたあだ名。
なんか嫌じゃない??
そりゃ魔方陣かけるし呪文しってるし幽霊だって見たことあるけどさ。
魔女はなくない??
「ねぇねぇ超ビックニュース!!」
どこのクラスにも必ず1人はいるであろう情報屋。
うちのクラスのは真っ黒な髪をいつも頭の後ろのほうで高くひとつに結んでいるちょっとつり目の山崎春香(やまざきはるか)。
「なに?どうせまた校長に続いて教頭もヅラだったとかうちの学校のアイドル、三沢葉月(みさわはづき)が登校中犬のフン踏んだとかそんなとこでしょ?」
「鈴ちゃんよくそんなに覚えてるねぇ。霞、校長がヅラなのくらいしか覚えてないよぉ」

そりゃあんたが功一に続いてウルトラスーパーミラクル馬鹿チルドレンだからでしょ。

のどにまで出かかった言葉を飲み込んで春香のほうをむく。
「で、どんなニュースよ。言うだけ言ってみな。」
「それがね、うちのクラスに転入生くるんだって!」
「女!?女の子!?」
いきなり目の色を輝かせて話に首を突っ込んできたのは学校一女好きの有川潤平(ありかわじゅんぺい)。
付き合った女の子の数は100人を超えるとか。
・・・ちょっとうらやましいな。
あたしなんて彼氏いない暦16年(もうすぐ17年)なのに・・・。
「残念だったね有川。男の子でしたよ。しかもすっげぇ美形☆」
「美形!!?」
思わず美形に反応する。
今美形っていったらあいつしかでてこない。
昨日の
青色の瞳と髪の
「なんだ。魔女もやっぱ男に興味あるんじゃない。」
「春香・・・男に興味ない女なんてあんまいないと思うよ?」
レ○とかでない限りは・・・
「でもやっぱあんたが」
がらがらがらがらっ
「はいはい席に着くザマス!HRはじめるザマスよ!」
春香の言葉を切るかのようにドアを開けて入ってきたのは茶色の髪を低い位置でひとつにまとめている、2−3の担任。通称オバタリアンジュニア。縮めてオバジュニ。
なんじゃそりゃってかんじだけど、確かにアバタリアンの子供ってかんじはする。
「今日は転入生がいるザマス。池沢くん、はいってくるザマス。」
ドアから入ってきたのは
青い
海をそのまま切り取ったような瞳と
それより少し薄い色をした髪の持ち主。
「あ・・・ぁあ!!?」
「鈴、どうしたの??」
席が一番後ろだったから先生には気づかれなかったが
前の席にいた美羽は振り返って問う。
「池沢佐祐です。よろしく。」
そんなあたしたちには気づかず、転入生の自己紹介がはじまる。
そして
ひとつの確信を得る。
           ―声が一緒だ―
ニックネーム ラピスラズリ at 09:13| Comment(4) | *Story***

2006年05月03日

鈴の音 海の色〜プロローグ〜

青い
海の色をそのまま切り取ったような瞳がまっすぐ自分を見つめていた。
それより少し薄い色をした髪が、首筋でかすかになびく。
「・・・やっと見つけた・・・」
形のいい唇が動く。
そしてその意味・・・
・・・やっと見つけたぁ?
なんのことさ。
いつもならこんな変な奴1発蹴って逃げるんだけど・・・
足が動かない
体が自分のものじゃないみたい
視線すら彼からはずすことができない。
それでも口に力を入れて声を出す。
「・・・・・どういう意味さ。」
搾り出すような変な声が出る。
かすれた感じの声。
こんな変な声って誤解されたかな・・・
普段も大していい声とはいえないけど。
ふいに彼はつぶやいた。
「いずれわかる。また会いに来る・・・」
彼がそう言った瞬間風が吹いた。
強い風が。
「ひゃあっ!?」
思わず髪を抑えて目をきつく瞑る。
自分のまわりを風が走る。
凄いスピードで駆け抜けていく。
そして・・・
風がやむ。
あんなに強かった風が一瞬でやむ。
瞑っていた目をゆっくり開ける。
「・・・あれ?」
ついさっきまで目の前に立っていた人がいない。
まるでさっきの風に運ばれたみたいに
一瞬で。
「・・・・・なわけないか。」
自分の考えを否定する。
風に運ばれる人なんているわけない。
あ、人じゃなかったりして。
だってあんな綺麗な瞳、見たことない。
あんな整った顔、見たことない。
魔物なんじゃないかって
思うぐらい。
綺麗だった。
今まで見た誰よりも
綺麗だった。


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絵本から移してきました。
最初はこっちでやってたんですが小説専用ってことで絵本に移動。
で、絵本壊すので再びこっちでやることになりました。
ちみちみちみちみ更新していきます。
感想等もらえると嬉しいですハートたち(複数ハート)ハートたち(複数ハート)
ニックネーム ラピスラズリ at 11:19| Comment(3) | *Story***
<ラピスラズリ(Lapislazuli)>とは何か?↓にスクロールしてください。 ラピスラズリの、ラピスはラテン語の石、ラズリはペルシア語の”青い”という「ラズワード」からきているそうです。日本では瑠璃(るり)や青金石(せいきんせき)と呼ばれます。 宇宙に星が瞬くような神秘的な宝石で、古代エジプト時代から聖なる石とされ、国王・王族・司祭階級しか身につけることを 許されなかったといわれます。 石の中で星が瞬くような金色は黄鉄鉱。他の宝石が単体の鉱物であるのに対し、数種の鉱物の 集合体から形成されたため、このような特殊な色合いが生まれたのです。マグネシウムとアルミニウム、リンの加水重合体が主材質です。紺青色の不透明な石。パイライトによる金色の斑が混入する場合もあります。 4種の青色鉱物と様々な種類の鉱物が混じりあって出来た岩石です。殆どの宝石が単一鉱物であるのに対して、ラピス・ラズリは異色な存在です。 宝石言葉は「永遠の誓い」です。 飛行石という人もいる。 サイトで調べましたがサイト名が不明。ここまでお付き合いしてくださった方、本当にありがとうございます。ゼヒラピスにご報告を(笑)